昭和~平成~令和とクラブを見てきたレジェンドDJ 宇治田みのる にインタビュー<後編>

2019.05.23

SHOTA「今のニンジンの話、すごく腑に落ちて全DJに読んでほしいくらい勉強になります!今のクラブってエントランスのセキュリティもしっかりしているし中でも何かあったらすぐスタッフがかけつけてきて問題解決するし、もしかしたら街のどこよりも安全な空間になっていて、昔あった良い意味での「危うさ」がそぎ落とされてきてますよね。昔はその「危うさ」がクラブのカッコよさにもなっていたと思うんです… でも大衆的になってシーン全体の裾野が広がることは良いことで、そこらへんはどう思いますか?カッコいいことに敏感な人ほど、「今のクラブは行かない」ってなると嫌なので。」
宇治田以前よりクラブが大衆化して、誰でも遊びに行ける場所になった、それは良いことだと思うんです。でもそれに対してクラブ側やDJがカッコいいことを教えてあげられなかった。大衆に寄せにいってしまった。そういうところがあると思うんです。最近は写真撮られたらまずいとかSNSの問題もあるんだろうけど、モデルやタレントが昔みたいにクラブに遊びに来なくなったよね。お立ち台も本来は美人のためにあったものなんだけど、今はたまに見ると「アレ…!?(苦笑)」ってことあるよね(笑)」
SHOTA「以前のクラブって大学のクラスの目立つ子が遊びに行く派手な場所って感じのイメージでしたけど、今はそういう派手な人ばかりではないですよね。これがクラブの大衆化なのか、って僕もびっくりすることあります(笑)」
宇治田「でもそれはしょうがないことかもしれないね。ただ、令和という時代になるのでいい機会だし、オリンピックに向けて外国人も増えることだし。カジノ法案が通ればもっとナイトタイムエコノミーは活性化されると思うし、遊びに来た外国人に「日本のクラブ、なんだこりゃ!」って思われないようなクオリティにクラブやDJがしていかないと。しかも外国人って英語の歌詞の意味は全部わかるじゃないですか。ただヒット曲をかけているとたまに「あなたを愛してる!」って歌詞の曲から「絶望だ!」みたいな歌詞に繋いじゃうDJがいたりするわけですよ(笑) 僕はアメリカにも少しですが居たことがあるし、英語が母国語の国に何度もDJをしにっているので英語がある程度はわかるんですが、いまはググればなんでも出てくるので、歌詞の季節感とか意味とかもDJは理解した方がいいと思いますね。」
SHOTA「僕はネイディブじゃないので、たまに「この曲暗くて盛り上がりづらいのに… でもなんで世界中で大人気なんだろう?」って思うことあるんですが、実はみんなその曲の歌詞に共感していたっていうケースが最近あります。いまや日本のクラブに遊びに来る外国のお客さんもたくさんいるので、よりワールドワイドな選曲スキルが求められますね。」
宇治田「僕がATOM TOKYOでDJする時、「良かったよ」って声をかけてくれるのはほとんど外国人なんですよね。彼らは歌詞の意味をわかってくれているから、歌詞のつながりを褒めてくれたりするんです。そういうDJの選曲スキルも今のDJには必要だと思っていて。お客さんに負けちゃダメなんだよね、かといって自分のやりたいことだけやってたら家に帰ってやってくれって話で。クラブもDJも、今は特に努力しなくちゃいけない時代だと思っています。
SHOTA「若いDJにとっては先輩やクラブからの目があるからなかなか挑戦しづらいことあるかもしれないけど、みんなで意識していかなきゃいけないですよね。」
宇治田「昔イギリスで初めて雨が降った時に傘を差した人がいて、最初は指さして笑われた時代もあったけど、今は雨が降ったら世界中の人が傘を差すのが当たり前になってきたわけで。やっぱり必要なもの・ことは世界中に広まっていくので、この記事を通して僕の話に「何言ってんだよ!」って思う人もいるかもしれないけど、僕は全く気にしない。共感してくれる人や正しいことだと思ってくれる人が多ければいいなと思う。シーンが変わってくれることを期待しているし、このDJ HACKSはそういうことを率先して発信していってくれるメディアだと思ってます。」

これからの世代、未来のDJへ

SHOTA「みのるさんはDJながらタレント活動もされてきましたが、今後どのようなDJが出てくると思いますか?またテレビに出るようなDJが現れると思いますか?」
宇治田「僕らの時代にはサーファーでDJで、喋れてって人が全然いなかったんだよね。だから僕はテレビ番組に声をかけてもらって、それをこなしちゃったから、いろんなことをやらせてもらった。もちろんもっとDJがテレビに出てほしいし、DJがテレビに出てきた方がクラブシーンにとっていいことだと思う。そもそも僕がテレビに出てたのも別に俳優になりたいとか、タレントになりたいとか思ってたんじゃなくて「テレビ番組に出ませんか?」って言われたものをこなしてただけで。だから自分から売り込みにいったことはないし、マネージャーも芸能プロダクションじゃなくて付き人みたいな人しかいなかったし。来たオファーを受けてテレビに出てたのも、DJやクラブの地位を上げるためだった。テレビに出始めた頃は控え室も弁当もなくて、「ちくしょう!俺たちはアーティストなのに!」って悔しい思いをしていたんだよね。たとえば「タモリ倶楽部」に出た時は寿司屋のセットでターンテーブルに寿司ネタを置いて回転寿司、っていうそんなネタをやらされたり… みんなには「なんでDJなのにテレビでバカみたいなことやってんだよ」って言われたよ。でも「世間がターンテーブルの存在を知ってくれて、DJってこういうものなんだってわかってくれたらそれでいいじゃん」って。そういう気持ちでやってた。カッコつけてばかりじゃなくて、DJやクラブシーンを良くしようって思っている人がいれば、自ずとテレビに出られるようになると思う。でもね、僕が君たちみたいになれるかっていうと無理で、それぞれ人によってちがう土俵があるよね。僕ができないことをできる人には年下でも後輩でも尊敬をするし。今の時代に合ったやり方でやれば良いんじゃないかな。たまたま僕の時代には“テレビに出る”ことだったけど、君たちの土俵の中で、僕でいうところの“テレビに出る”みたいなものを作ればいいと思う。それが何かっていうのをいつも考えて、ご飯食べてる時もデートする時も、クラブのこと音楽のことを考えて挑戦していけばシーンは良くなると思う。
SHOTA「みのるさんのように圧倒的な存在感を出せるようなカリスマになれるように努力したいです。」
宇治田「僕も日本のクラブが世界のクラブに誇れるようになったらな、とシーン全体を思って日々精進している。世界に誇れるのはクラブの一晩の売り上げだけじゃなくてね。それは「DJがテレビに出れなかった時代があったけど、テレビに出ることでフィーチャーされるようになったらな」と思っているのと一緒で。」
SHOTA「これはもう全国のDJに絶対に、全文読んでほしいぐらいの貴重なインタビューですね。みのるさんのように、クラブシーンのためを思っている人はなかなかいないように感じます。狭い業界なのに自分がのし上がるために後輩を必要以上に抑圧したり、先輩の存在のせいで若手が成長できない風潮があったり、そういう話を何度も聞いてきました。自分のこと、自分の生活のことばかりを考えてしまっている人もいます。これからの時代はみんなで手を取ってシーンを良くしていこうという風潮ができればと思うんですが…」
宇治田「シーンの足を引っ張っている人たちって、自分のことしか考えてないんだよね。そういう人たちって、音楽が好きでDJを始めたわけじゃないんじゃないかな。モテたいとか目立ちたいとか、キッカケはなんでも良いんだけど、そういう人と音楽が好きでDJを始めた人は根本に持っているものがちがうんだろうね。自分のことだけを考えてのし上がりたいのは別にいいんだけど、もっと視野を広く持ってクラブシーン全体が盛り上がるように考えて動いた方が自分も盛り上がれるのに!って思う。そもそも、僕はクラブで社員としてDJをやったことがなくて、日本初のフリーランスDJなんだよね。アルバイトして7万円ぐらいのハイエースのバンを買って、機材とレコードを積んで各地でDJした。でも、最初は1回2000円しかもらえなかったからコンビニに行ってどん兵衛とカップヌードルの麺の量を見て「どん兵衛の方が麺の量が多いからどん兵衛を買おう」って、そんな生活を送ってた。でも六本木のディスコで学生パーティーが増えて、主催者に呼ばれてDJするようになった。ディスコのDJたちは僕のことを知らないわけで、そういうDJが回してることに対しておもしろくないんですよ。だから僕がやっている時に針圧を変えられちゃったり、照明をいじってくれなかったり、いろんな意地悪をされた。今は皆んな仲良しだけどね(笑)。「なんでお前のために照明しないといけないんだよ」って当時は言われたし。当時の僕は客としていろんなディスコに行ってて、イベントでDJしてたんだけど、当時のディスコはファミレスみたいなもので、どこに行っても同じ曲がかかってたんだよね。だから僕は本当にかけてほしい曲とか、ディスコでかからないロックっぽい曲とかをかけてて、ドカーンって盛り上がってるのがうわさになって、ディスコからオーガナイズをお願いされるようになって、27歳の時に「他人の店でこれだけお客さんを集められるなら自分でやろう」って思って「エロス」というクラブを作った。」
SHOTA「すげ~!いまの僕と同い年ですね(笑)」
宇治田「とにかく、みんなでクオリティを上げていくことだよね。今が悪いとは言わないけど、直せるところいっぱいあるんじゃないかな。激安セールみたいなフライヤーで「24時まで無料!」とか「〇〇の〇〇で最安値!」とか。クラブはディスカウントストアーじゃないんだからああいうのカッコ悪いからもうやめてほしいよね(笑)」  
SHOTA「ここまでインタビューに答えていただきありがとうございました。最後に一つ質問があります、また生まれ変わっても宇治田みのるになりたいですか?」
宇治田「もちろん。大富豪の宇治田みのるに生まれ変わりたいです(笑)。まあ、子供の時に貧乏だったのはいい経験になってるけど、生まれた時からお金持ちだった方が良いよね(笑)」
SHOTA「でも逆にハングリー精神が培われたという言い方もできますよね…?」
宇治田「たしかに、お金持ちだったら今や存在しないだろうね。今頃どっかで死んでるんじゃない?(笑) 子供の時にお袋とつらい思いをしてたから洋楽にも出会えたわけだし。いつもAM 810 HzのFEN (Far East Network)を聴いてた。当時は洋楽が流れるのはFENしかなかったから。英語で流れているのをずっと聴いてて。今はShazamがあるけど、当時は曲名がわからないからレコード屋さんに行って「“エビバディダンシング”って曲ください!」って言って「何それ?歌ってみて」って店員さんに言われて、ラジオで聞き取れた歌詞を歌ったら「あ~、“オンザビート”ね」って言われたり(笑)。ディスコの時代はDJブースで回っているレコードを見て曲を覚えたりしたね。やっぱりレコードの頃からやってたDJは信用できるよね、って言うと怒られちゃうかもしれないけど、当時はお店に行って曲を探さないといけないし、かけたくてもかけられない曲とかいっぱいあった。今は簡単に曲が手に入っちゃうけど、昔は「あの人だけが持ってる曲」みたいなものもあったよね。まあ、生まれ変わっても宇治田みのるがいいかな。」

編集後記

前編・後編にわたり、宇治田みのるさんにインタビューさせていただきました。
日本のクラブシーンを語る上で欠かせないレジェンドDJで、お話にもあったように世の中にDJというものを先陣切って広められてきた方です。
40年以上も日本のクラブを知るみのるさんが見た今のクラブシーンに対するお話、とても貴重なトピックばかりでした。
自分の知っている世界だけでものを考えがちですが、経験を積んできた先輩の話ほど今のヒントになることはないと思っています。
今回はDJの方、クラブ業界の方は特にタメになる、考えさせられる話でした。
DJ HACKsでは今後もいろんなバックグラウンドを持つ方、いろんな観点からの意見を伺って皆さんにお伝えしていきます。

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