ナイトクラブインタビュー「クラブ支配人」編

Blog by DJ HACKS

2019.06.14

日本のナイトクラブシーンで活躍するキーパーソンにフォーカスするインタビュー企画「DJ HACKs NIGHTCLUB INTERVIEW」。DJやパフォーマーをはじめとする表で活躍してる出役の人から裏方として活躍しているプロデューサーや演出家まで、ナイトクラブ (以下:クラブ) に大きく貢献している人が今何を考え、何に取り組んでいるのかを掘り下げて聞いていきます。
今回は「ナイトクラブの支配人」、関西を代表する人気ナイトクラブ「Club Piccadilly (ピカデリー)」を仕切っている中山さんにインタビューしてみました。
DJ HACKs Club Interview ピカデリー中山さん
「クラブの支配人ってどんなことを考えてクラブを運営しているの?」「人気店をつくる秘訣とは!?」など、普段僕たちがなかなか知れないようなことを聞いてみたいと思います!
普段遊びに行っているクラブのことをより深く知れるチャンスかもしれません。

世界ランク99位にまで日本のクラブを押し上げた立役者、中山さんにインタビュー

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SHOTA「まずは自己紹介をよろしくお願いします!」
中山CLUB PICCADILLY UMEDA OSAKA の総支配人、中山裕樹と申します。ナイトクラブ業界に入ったのは16歳の時ですね。僕の地元は大阪・アメ村に近くて、そこに出入りしてるとよくDJが歩いてて、「カッコイイな」と思ったことがきっかけでDJスクールに通い始めました。そこから16, 17歳ぐらいからアメ村のクラブに出入りするようになって、レジェンド的なDJ MINAMIさんやDJ BENKAYさん、DJ KAZ001さんを見て「あそこでDJやりたい!」と思ってクラブ業界にズッポリ入った感じですね。大学に入学して神戸に行くことになって、神戸のクラブ業界の方々とも繋がったんですが、その当時は学生イベントがなかったので神戸のクラブで学生イベントを立ち上げました。DJ KENTOやDJ YOGA、DJ B=BALL、MC AMIとかは同じ歳なんですけど、彼らには勝てないですし、当時から神戸で一緒にやっていたDJ U.S.K.とかをバックアップできるようになりたいと思って、店側の人になりました。大阪にクラブができるタイミングで大阪に戻って、神戸から一緒にクラブを盛り上げてくれる若いDJを連れてきてから今まで10年、って感じですね。」
SHOTA「PICADILLYで働き始めたのは?」
中山「ここに来たのは3年前ですね。でもその前は神戸のクラブで店長をしたり、大阪のミナミのクラブで責任者をやっていたり、クラブ側の人としては10年です。」
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SHOTA「3年前のPICCADILLYってどんな感じでした?」
中山「カッコよかったですよ。お店の作りも日本で一番だと思っていて、DJのスキルやブランディングも日本で一番の人たちの集まりだと思っています。」

世界のトップ100クラブに日本のクラブが仲間入り

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SHOTA「PICCADILLYといえば、DJ MAG TOP 100 CLUBSという世界の人気クラブランキングで99位にランクインしたニュースが強く印象に残ってるんですけど、日本のクラブがトップ100にランクインした要因はなんだと思いますか?」
中山「DJや裏方などのスタッフを含め全員で「PICCADILLYを世界ランキングに入れよう!」という熱意が強かったからだと思います。うちのスタッフはみんな強制ではなく自発的にSNSで発信してくれていたのもあると思います。僕だけじゃなくて、影響力のあるDJ B=BALLを筆頭に、スタッフ一人一人のプロ意識の高さは感じています。接客スキルやコミュニケーション能力も高いと思いますね。 営業中に悔しくて泣く子もいますし、社員の会議で意見がぶつかり合うこともありますが、結局は「PICADILLYをどうしたいか」という事が一番にあります。だから「自分が楽しく働けたらそれでいい」っていう自分勝手な人がうちの店にいないというか、みんなが “PICCADILLYプライド” を持っているんですよね。

スタッフが自分の働く店にプライドを持っている

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SHOTA「そうやって基盤がしっかりしているクラブは強いですよね。“PICCADILLYプライド”をスタッフさんたちが自然に持つようになる秘訣はなんだったんですか?」
中山「ファッションやトレンドを欠かさずチェックして、働いてるスタッフたちに共有しています。だからスタッフの流行りに対する感度は高くて、「この曲流行ってるよね」といえば「◯◯の曲ですよね」って返ってくるんです。そういう流行への敏感さは特にお店全体として自信を持っているところで、そこがみんなの“PICCADILLYプライド”に繋がっているんだと思います。」
SHOTA「中でも思い出深いイベントなどはありますか?」
中山「1つ1つのイベントに意味がありすぎて何とも言えないですが、10年前に衝撃を受けて当時からレジェンド的存在だったDJ MINAMIさんやDJ BENKAYさんと立場は変われど一緒に仕事ができているということ。そして今はDJ B=BALLやDJ KENTO、DJ YOGAのような関西を代表する同世代のDJたちとも一緒に仕事ができていることが僕自身の原動力になっています。」
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SHOTA「DJ HACKsの読者さんの中には“PICCADILLYは海外アーティストがよく出演しているクラブ”というイメージの人が多いと思うのですが、海外アーティストを呼べる理由というか、強みは何ですか?」
中山「うちにはメールのやりとりがもの凄く丁寧な裏方のバイリンガルスタッフと、海外の方とフランクに話せるハーフのブッキングプロモーターがいます。オファーをかけるときは英語で丁寧なメールを送って、アーティストが日本に来たときはブッキングプロモーターが海外のノリで仲良くなって、という役割分担ができていて、海外アーティストからのウケも良いみたいです。 従業員の知識量が高いことも大事で、来日するアーティストについてよく知っていたり、誰をブッキングするか決めるときに意見を出してくれたり、最新の音楽を勉強してくれているところも強みだと思います。」
SHOTA「PICCADILLYはクラブ初心者だけでなく、音楽玄人にも寄り添ったクラブとして、関西の中でも確固たる地位を築いているような気がしますね。」
中山「常に発信者でいなければいけないと思っています。それも“PICADILLYプライド”の1つです。流行りを捉えて発信し続けていけないと、今後クラブシーンが同じようなおもしろみのないものになってしまうと思うんです。PICCADILLYでしか味わえない空間や感覚を作ってお客様に何らかの刺激を受けてもらえたらなと思って演出や選曲を考えています。遊びに来てくれた全員に100%楽しんでもらうことは難しいですが、より多くの人に楽しんでもらいたいということは常に考えています。」

クラブって実は怖いところじゃないんです

SHOTA「今の日本におけるクラブの立ち位置についてどう思われますか?」
中山「一般的に認められてきたかなと思いますが、海外と比べると、まだ世間の目は冷たいんじゃないかと思ってますね。音楽面でいえば、最近ではテレビでもクラブミュージックが使われるようなり、クラブ文化に触れる機会が世間的に増えてきたのでシーンは良い方向に向かっていると思います。一方で、クラブという場所に対しては“怖い”と思っている方がまだ多い現状です。風営法改正後からクラブの経営者たちが“環境を良い方向に変えていこう”としているので、実は世間のみんなが思っているほど危ない場所ではないです。ただ、それは店を運営する僕たちやアルバイト含め、従業員・DJ・セキュリティスタッフらみんながこの業界の見られ方を考えていかないと、今後日本のクラブは発展していかないんじゃないかなと思いますね。

クラブ=接客業=サービス業

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SHOTA「“クラブ=怖い”と思われないように、たとえばどんな工夫をしていますか?」
中山「正直、昔の僕は“怖い”と思われる従業員の代表例と言えるぐらい、接客態度が悪かったのであまり偉そうに言えないですが(笑)、ある時をきっかけに“クラブ=接客業=サービス業”ということを学んで、“お客様と接する”という意識付けをすべての従業員で徹底しています。いまやクラブは居酒屋、カラオケに次ぐナイトライフの定番になりつつあって、クラブに初めて遊びに行くお客様も増えています。“もしかしたら怖いところなんじゃないか”って不安な気持ちを抱えながらクラブに足を踏み入れてみる方もいると思うんです。そんな方に対してクラブスタッフが不愛想な態度をとったりしたら嫌な思いをさせてしまうだけでなく、日本のクラブシーン全体に迷惑がかかっちゃいますからね。僕も従業員には「クラブだから許される常識はない。クラブも普段行くようなレストランと同じようにプロのサービス業として親切に接客するべき。」ということを常に言っています。昔の自分にもし会えるとしたら言ってやりたいですね(笑)」
SHOTA「たまにSNSで“クラブを卒業します”と宣言している人を見かけますよね。あれって「クラブに行ってる=チャラい」、「その歳でまだクラブなんかで遊んでるの?」という周囲からの冷たい視線を気にしているからだと思うんですが、「クラブなんか」と言わせないかっこいい“大人の遊び場”にするためにはサービス業としての高い意識を保つべきだと思うんです。
中山「クラブに対して“怖い”というイメージを持っている人たちいると思いますが、PICCADILLYに来てもらえばその常識は壊せると思います。実際みんなが思っているような怖い場所ではないっていうのを感じてほしいですね。」
SHOTA「最近のクラブでは明るくてお客さんに人気のあるスタッフも多いですよね。彼らを見ているとかっこつけて不愛想な接客をするよりも、笑顔を作ったり楽しませる接客の方がいいなと感じます。セキュリティの人だっておもしろい人多いですし。」
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中山「エンターテイメントというものがもっと身近なものであるためには、クラブで働いている側の人たちがディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのキャストのように、心も接客もお客様の目線でありながら、ファッションや音楽なども良い意味で尖っているべきだと思います。尖っているものを共感してもらうためにも、従業員とお客様の距離感をもっと身近にするサービスだったり心遣いを大事にしていきたいです。これは僕一人だったり、スタッフだったりだけが意識していてもダメで、DJやVJ、照明担当、セキュリティスタッフ、裏方も含めたお店に関わる全員でそういう意識を共有すべきだと思います。全員がお客さんを楽しませたいという思いで日々取り組んでくれたら最高ですね。たとえばシャンパンを持っていく時のシャンパンパレードは今いろんなクラブで見ることができますけど、海外のクラブに行った時に初めてあれを見かけた時は「すげえ!!」って衝撃を受けたのを覚えています。ただそれもありきたりにならないように、他のクラブさんとの違いを作りながらお客様がより楽しめる演出を工夫しています。一つ一つの動きがエンターテイメントにつながるということを自覚して自ら動きだせるスタッフが日本のクラブシーンで増えるともっとおもしろくなるなと思いますね。極端な話、立ってる姿勢だけでもエンターテイメントになると思うんです。別にピシっと立っていることが正しいわけではなくて、振る舞い方の一つ一つがエンターテイメントになっていけばいいなと思ってます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、クラブを仕切っている立場の人、支配人がクラブシーンに対してどう考えているのかをお伝えしてきました。
どういう内容のパーティーを作っていくか、そして実際のクラブの中でどういうサービスをお客様にしていくか、とても興味深いお話が聞けたと思っています。
なぜクラブ=怖いところだと思われるのか、その理由を一つ一つ潰していけばいいですよね。
「怖い人や薬やってる人がいるんじゃないの?」
→ 暴力団関係者や薬を所持してる人が入れないように入り口のセキュリティがしっかりしている。
「ナンパのしつこい人がいそう」
→ すぐに近くにいるセキュリティを呼んでその人をクラブの外に出してもらえば解決しますね。
「スタッフが不愛想なイメージ」
→ ピカデリーの中山さんのようにしっかりとしたプロの接客を指導しているクラブ支配人がいますので、ご安心を。
このインタビュー記事が日本全国のクラブ関係者の目に留まって、クラブシーン全体がいい方向に進んでくれたらうれしいですね!